自民党萩生田氏との面談録

はじめに


2023年1月20日、「学校園の空気環境を考える会」代表及び保護者2名が、全国の学校で中性能フィルター導入を推進している株式会社CLEAIRの方同席のもと、自由民主党政務調査会長萩生田光一氏と面談しました。


貴重な機会をいただき、萩生田氏と関係者の皆様に感謝申し上げます。短時間ながら密度の濃いやり取りをさせていただき、一同感激しております。広く世間にも知っていただきたい内容と考え、許可をいただいた上で、保護者の個人特定につながる情報を除く、萩生田氏の主な発言とやり取りのほぼすべてを公開します。




要望

  • マスク着用や黙食の見直しの前に、空気清浄機、中性能フィルター、換気設備、CO2モニター等を導入・強化し、教室内を安全な環境に整えてください。

  • 既に出ている事務連絡より更に強い通達や交付金を出し、設置を目指し声をあげている市民と、市民と共に尽力してくださっている地方議員の方たちの後押しをして下さい。

要望書の全文はこちらからご覧いただけます。


要望の理由

代表:学校は、様々な事情がある子どもたちが集まる場所です。アメリカオランダオーストラリア等では、子どもたちを守るために、空気清浄機や換気設備等の学校内の換気対策に着手しました。対しまして、日本では「窓を開ければ大丈夫」だと、依然として多くの学校で窓を開けての換気にとどまっています。しかし、猛暑日や雪や雨が降りしきる寒い日、窓を開けられないほどの強風の日、無風の日、花粉が舞う日など、窓開け換気は天候に左右され、対策として穴があります。換気対策を評価するCO2モニターさえも、設置されていない学校も多く、上記のような気候の日でもきちんとした換気ができている、とは言えないのではないでしょうか。

私たちもコロナ禍の長期化による子どもへの影響を懸念しているところであります。しかし、更なる安心・安全な環境整備をする前に緩和を急ぐのではなく、どの季節でも、どんな気候でも、安定的に守れるような環境を整えることが、子どもを守る立場の大人が今一番に為すべきことではないでしょうか。そして、何より訴えたいのは、空気清浄機や換気設備等の導入は、子どもたちへ負担をかけることなくできる感染対策だということです。

導入を求める保護者が各自治体に働きかけをしております。川崎市では、自民党の加藤孝明議員が市に積極的な働きかけを行い、仙台市でも、自民党の鈴木勇治議員のお力添えでクレアウィンフィルターの試験導入が先日決定いたしました。

感染回避により長期間登校できない児童生徒が二倍以上増えたという報告もあります。対策なしに緩和するとその子どもたちの登校するきっかけが失われるばかりか、登校しているものの不安な子どもたち、そして登校できないほどの後遺症が残ってしまう子どもも増えるでしょう。対面教育に重きを置く日本の教育において、登校できない子どもが増えることは、望ましいこととは思えません。どんな子どもでも、安心して楽しく学校生活が送れるように力を貸して下さい。登校したいのに登校できない子どもがもっと増えてしまいます。対策なしの緩和が不安な市民や、その声に耳を傾けてくれている地方議員さんの後押しをして下さい。国が責任を持って、迅速な環境整備がされることを強く要望します。

保護者A:私は父の顔を知りません。母とも長く暮らしたことがありません。子どもと一緒に長く暮らしたいです。子どもが学校からウイルスを持ち帰ってしまって私にうつったとしたら、難病ですので、死ぬ可能性が高いです。もしそんなことが起こってしまったときに、そのことを一生引きずっていく子どもにはしたくありません。学校での感染リスクを減らすために科学的見地に基づく空気環境を整えて下さいますようお願いいたします。

保護者B:私は不妊治療を休み休みしつつ15年かけてやっと息子に会えました。息子自身に基礎疾患があり、私にも数多くの基礎疾患があります。昨年の夏にマスク着用を緩和する動きがありましたが、その時に息子もクラスター経由で感染し、最終的に家族全員が感染しました。

半年経過していますが、息子は顔色が悪く、学校に遅刻しがちになり、大腸炎のような症状が残っています。「今日は調子がいいね」といえる日が全くない状態です。それでも、学校へ行きたいと思って登校しています。しかし、もし(強制的に)マスクを外さなければいけないようになったら絶対に嫌だ、行くのが怖いと言っています。安心して子どもたちが学校に行き、笑って給食が食べられるような環境の整備をお願いしたいです。また、感染が多い状況で、マスク着用を含めて一斉に緩和されるとすれば大変不安です。

代表:私の子どもにも持病があり、感染が拡大しているときには登校しない方が良いとの医師からの診断書を学校に提出しています。最近の5類への移行、屋内でのマスク着用が緩和になるといった話を息子がニュースで見た時に「ああ僕はもうこれから先も学校に行けないのかな」とぽつりと呟いていました。登校・対面が第一ということは分かっていますので、本当に子どもを学校に行かせてやりたいですが、医師からも注意されている身ですから、息子のその言葉を聞いて、私自身も非常に苦しくなりました。

学校には、子ども自身に持病があったり、家族に持病があったりと色々な事情を抱えた家庭の子どもがいます。新生児のいる家庭もあるでしょう。そうした、様々なリスクを背負った子どもたちも、守ってください。マスクを外したい子がいるということも承知しています。ただ、マスクを外したい子たちの多くも決して感染したいわけではないはずです。外したいだけで感染したいわけではないのです。そうした子どもたちをひっくるめて、全ての子どもを守れるようにすることが、政治や大人の一番の仕事だと思っています。

要望ののち、44名の子どもからの手紙のうち2名の手紙を読み上げ、代表及び保護者2名、株式会社CLEAIRの方が現状や課題を説明し、萩生田氏とディスカッションしました。



なお株式会社CLEAIRの方とは、SNSでの草の根活動をきっかけに出会い、地方自治体の事例や学校の測定データを持つ空気環境の専門家としての同席を依頼しました。株式会社CLEAIRと「学校園の空気環境を考える会」との間に利害関係はなく、会として、株式会社CLEAIRに限らず特定企業・団体の利益をはかる意思はありません。

以下に主なやり取りを、箇条書きで列挙します。括弧部分は、適宜「学校園の空気環境を考える会」にて補足しています。

 

主なやり取り

萩生田氏⇒代表・保護者:

学校の空気環境について

  • パソコンが当たり前にあるようにエアコンも入ったので、「エアコンが入ったのならば空気清浄機も換気設備も教室にあった方がいいよね」という当たり前の世の中にしていきたい。

  • 教室の環境は変えていかなければいけない。数少ない子ども達のために余りにもお金をつかわなさ過ぎた日本。私は空気清浄機や換気設備を教室に入れるというのは贅沢品でも何でもないと思っている。

  • 設置者は自治体であるため、様々な補助金を用意し、やる気のある自治体にはどんどん先頭を走ってもらいたい。一方で、中性能フィルターが一社のみというのは入札(価格競争が起きない)に関わる課題があるため、業界の方も大手を含めて動きが必要。

  • 地方自治体の考え方もあるため、必ずしも国が号令をかけたから一斉にという事には行かないと思うが、(空気清浄機などは)決して贅沢品ではない。私立ではどんどん進めている。党内でも議論を進めてもらいたい。既に補正予算などで上手にやっている自治体も出ていると思うが、社会実験的に、やれるような環境はやってみたらよい。


学びの保障について

  • 子ども達の手元にタブレットやパソコンが届いていると思うが、GIGAスクール構想を進めさせてもらった。(地財措置などしても)27年間進まなかったが、私が文科大臣を務めた際に皆さんに協力してもらい1年で小中学生一人一台の環境を整えた。学びを遅らせてはいけないという思いで実施した政策であり、コロナに立ち向かい、コロナによって仮に学校が閉まっても学びは止めないという想いで用意した。


マスクの着用について

  • 文科大臣を2年経験し、全ての子ども達を守りたいと思っている。マスクをする・しないで子ども達や保護者、地域の分断を生みたくない。互いにどうやったら共存していけるかについて話しており、私自身はどちらかのみに加担するつもりはない。「学校には色々な環境の子ども達が来るため、家族を守るために一生懸命頑張っている子ども達が、他の子ども達から感染し、家族に持ち帰り重症化する、時には命を落とすかもしれないということも考えてもらいたい」とマスクの緩和を望む人達にも話している。

  • 教育委員会としっかりと連携をして、マスクを着け続けたい理由がある子どもにはそれを認め、外したい子どもは場面によって外してもいいようにしていきたい。2類が5類になったからといって「子どもは皆マスクを外せ」と文科省が指示をするとはとても思えないし、認めるつもりもない。そこは柔軟にやりたいと思っている。お母さんたちも、子どもを想う気持ちは同じなのだから、マスク派対反マスク派みたいにあまり先鋭的にならない方がいい。


代表及び保護者A⇒萩生田氏:

自治体への予算措置について

  • 代表:自治体の教育委員会によると、(導入した)あとからの予算措置では手元に予算がなく、余裕のない自治体は二の足を踏むとのこと。(さらなる)交付金を出すなど方法を考えて頂きたい。

    萩生田氏:教室内でのウイルスの飛散について文科省ではスーパーコンピュータによるデータ分析を行って公表した。こうした知見も活かし、ゼロに出来るわけではないが、10のまま行くわけにもいかない。空気清浄機が、高望みの物ではない、贅沢品ではないという価値観を一生懸命啓蒙して行きたい。


学びの保障について

  • 保護者A:コロナ禍の前より、不登校児童生徒に対して、別室登校も認める、学校での指導だけではないといった形で文科省も動いていたと思うが、結局は校長裁量であったり、各自治体・教育委員会裁量になっていたりと、学校間格差が非常に大きい。オンライン授業の指導に関しても自治体間格差・学校間格差が大きい。出席の取扱いや成績表への影響等についてもお考えを頂きたい。

    萩生田氏:コロナ禍の中でかなり柔軟にしたつもりでいる。少なくともコロナで学校を休まざるを得なかった子ども達が、その欠席によって高校進学等でハンデを負うことがないように、欠席にしない取扱いにしたはずだが、もし学校間格差等があるのであれば確認する。やむを得ず休まなければならない子ども達の救済策についても手を打ってきたつもりだが、学校に行きたくないから家で授業を受けさせろ、と言われても困る。(やむを得ない場合を除いた)不登校を積極的に認めるわけではない。オンラインがあるから学校に行かなくていいんだという価値観の人もいるが、私は学校は対面で色々な人たちと、好きな友達も苦手な子も、好きな教科も嫌いなことも、みんな経験して大人になっていく場だと思う。だから学校には来てほしい。そのための環境整備として、必要なことはしっかりやって行きたい。


感染不安の出席停止について

  • 代表:新型コロナウイルス感染症が5類に分類された場合は出席停止ではなくなるのか。

  • 保護者A:既に欠席になっているところもある。

    萩生田氏:コロナ自体がなくなったわけではないため、対策の中身は今までとそこまで変わらないと思う。学校現場で不安を感じる子ども達が、仮に学校を休まざるを得ない心理状態になった時に、欠席と直ちにはしないようにしているが、これからもそうならないようにしてきたい。


(補足)中性能フィルターとは

中性能(MEPA)フィルターとは、5㎛より小さい粒子に対して、中程度の粒子捕集率を持つエアフィルターを指す。高性能(HEPA)フィルターと同じ帯電フィルターであり、エアロゾル0.3㎛粒子を50-75%程度除去する。日本では、株式会社CLEAIRがエアコンに貼り付けて利用できるシート状の中性能フィルターを開発・販売している。

今後、仙台市で学校への試験導入のためのデータ調査が実施される予定であり、佐久市でも市民プロジェクトとして学校の空気環境改善を図る動きがある。

なお、2022年9月には、独立行政法人国立病院機構仙台医療センター臨床研究部の西村秀一ウイルスセンター長による論文において、準HEPAフィルターと同等の性能持つフィルターでも、送風機の能力を上げることで、HEPAフィルターよりも優れた空間内浮遊粒子の低減効果が示された。


萩生田氏⇒株式会社CLEAIR:

シート状の中性能フィルターについて

  • 中性能フィルターは、既存メーカーのエアコンに簡単に付けられるのか。

    株式会社CLEAIR:当社では家庭のエアコンに付けることが出来るように、2020年7月に中性能フィルターを一枚の布状にしたものを開発した。高性能であるHEPAフィルターを使うと空間内浮遊粒子を99%捕れるが、途中で中性能フィルターによってある程度捕らないと壊れてしまうため、低性能・中性能がなければ効果がないと考え、中性能フィルターの製品を作った経緯がある。

  • 既存のエアコンの機種を変更しなくても大丈夫か。機種を変えなければいけないとなると大変そうだが。

    株式会社CLEAIR:基本的には変更する必要はない。規格は、JISで全て決まっている(HEPAや準HEPAや中性能フィルターはJISB9908規格で試験した数値から分類される)。

  • HEPAフィルターは沢山のメーカーのものがあるが、中性能フィルターは国内で何社作れるのか。

    株式会社CLEAIR:HEPAフィルターを作っているメーカーは中性能フィルターも作ることができる。しかし、一枚のシート状になっている物は、(現状)残念ながら当社のみ。販売に関する規格がないため、どのメーカーも布状の製品を作らない。


株式会社CLEAIR⇒萩生田氏:

シート状中性能フィルターの製造について

  • シート状の中性能フィルターはどこのメーカーでも作れる。皆で作れば安価になるため、そうして広く行き届けていくことを目指している。

    萩生田氏:「鶏と卵」の関係。これでいいとお墨付きが出れば他の(メーカーも)皆が作ってくれるようになるということ(と理解した)。